その”まち”のその”商店街”のその”建物”に何があると良いのかーーー。
アイデアを生み出し、その実現まで取り組む
空き店舗再生プロジェクト「おおさか商店街オープン2024」の参加者を募集いたします。
今年度の舞台は、東成区の「神路一番街商店街」と東住吉区の「矢田駅前商店街」です。
商店街や地域の人はもちろん、まちで面白いことをしてみたい人や、
まちで商売を始めたい人、学生やデザイナー、建築家…。
参加条件は意欲がある方、特別な経験やスキルは必要ありません。
一緒にエリア活性化をもたらす事業プランの作成・実行に挑戦しませんか?
■ 参加費:無料(会場等までの費用はご負担ください)
■ 定員:各商店街8名程度
■ 募集締切:2024年11月17日(日)
自分の好きな“商店街”や“まち”を面白くしたい!楽しくしたい!何かしたい!と思う人のための講座です。講師が活動する商店街やまちでのフィールドワークのほか、架空の商店街のまちづくりを考えるグループワークに取組むなかで、まちコーディネーターとしての力を磨き上げます。まちや商店街の再生に興味や情熱をお持ちの方の受講をお待ちしています。
■募集人数:12名
■参加費:5,000円
■応募条件:原則全5回に参加でき、まち・商店街の再生に興味や情熱を持つ人
■応募締切:2024年7月28日(日)
※定員に達しなかった場合の2次締切…8月11日(日)
2023年度からスタートした商店街活性化プロジェクト「おおさか商店街オープン」。商店街の空き店舗を活用し、商店街の再生手法を実践する人材の育成を図るとともに、自律的な商店街機能の再生・活性化につなげる大阪市の新たな取り組みです。
今回、プロジェクトが始まった経緯や今後の展望について、大阪市経済戦略局産業振興部の井尻久貴さんと芝大輔さん、プロジェクトを運営するナゴノダナバンクの市原正人さんと藤田まやさんに話をお伺いしました。
商店街の数は断トツで全国ナンバーワン。名だたる商店街が数多くある一方、市内中心地を離れると空き店舗が目立つ商店街も多く…。
大阪市 芝さん:市内には約400の商店街があり、その数は全国でナンバーワン。地元ではもちろん、観光地としても人気の商店街がある一方で、中心地から離れた地域では空き店舗の増加に悩む商店街も少なくありません。昨年度、市が独自に実施したアンケート調査では、空き店舗が10%以上ある商店街は約55%で、全国平均の43.3%※1よりも高い数字でした。
※1 中小企業庁令和3年度商店街実態調査
芝さん:大阪市ではこれまでにもイベントの実施や専門家の派遣をはじめ、商店街に特化したふるさと納税など、多方面からサポートを行ってきました。そして新たな試みとして商店街そのものを再生していく支援に乗り出そうと、大阪市商店会総連盟や大阪商工会議所と連携してスタートしたのが、「空き店舗を活用した商店街再生事業」。ナゴノダナバンクさんとともに、「おおさか商店街オープン」を企画・実施することになりました。
ナゴノダナバンク 藤田さん:「おおさか商店街オープン」は大きく二つから構成されていて、一つはまちづくりについて学ぶ「まちコーディネーター養成講座」。そしてもう一つが、実際の商店街の空き店舗を舞台に、事業プランの作成から店舗のオープンまで取り組む「商店街オープン」です。
※プログラムの詳細は、おおさか商店街オープンのWEBサイトをご覧ください
芝さん:商店街そのものを再生していく試みは初めてですが、特に大阪市のような都市部では、商店街の協力はもとより事業者探し、つまり「人を集めるためにどういったお店を開店させるのか」が課題になると考えていました。実は『名古屋市円頓寺商店街の奇跡』という著書を読んだことがあり、ナゴノダナバンクさんの活躍は以前から知っていて、名古屋市の中心地の商店街で空き家・空き店舗対策に多くの実績があるナゴノダナバンクさんへの期待は大きかったです。
ナゴノダナバンク 市原さん:ナゴノダナバンクは、名古屋駅と名古屋城のほぼ真ん中に位置する円頓寺商店街がある那古野地区を拠点に活動しています。2007年にその那古野地区を盛り上げようと発足した地域主体のまちづくり団体「那古衆(那古衆)」が私たちの原点。空き店舗の大家さんと開業希望者のマッチング、店舗のリノベーションなどを手掛け、これまでに那古野地区では約40軒を誘致しました。
まちづくりを学び、人材を育てる「まちコーディネーター養成講座」(通称:マチコ)。商店街やまちづくりに興味をもつ人たちが、その第一歩を踏み出す場所に。
〉〉〉第1回目となるマチコは、2023年9月~11月に全5回の日程で開催。座学やフィールドワークを通してまちづくりや商店街について学ぶとともに、架空の商店街の活性化プランの作成に5つのチームに分かれて挑戦した。
藤田さん:実は、マチコの募集を始めてすぐはなかなか受講者が集まらず…正直、とても焦りました。結果的には、募集定員の倍の人数の方に受講していただくことになり、ほっとしました。
大阪市 井尻さん:不安だったことと言えば、架空の商店街を舞台にしたワークショップだったこともあり、どれくらい本気で議論してくださるのかという心配もありました。でも皆さん真剣そのもので、最終発表ではそれぞれ個性的かつ魅力的なアイデアばかり。商店街やまちづくりへの関心の高さを実感すると同時に、商店街の未来もまだまだ明るいと感じさせてくれました。
芝さん:講師やアドバイザーの方々の実績や経験も豊富で、受講者の皆さんは講義の内容にも高い関心をもって学んでいる様子でした。
藤田さん:はい、今回は私たちのほかに大阪市の地理や特色に詳しい建築士さんや、実際に商店街やまちで活動する方を講師やアドバイザーに招きました。その甲斐もあって受講者の皆さん、座学やフィールドワークはもちろん、ワークショップも一生懸命に取り組んでくださって。働いている方が多く日々お仕事で忙しいにも関わらず、講座以外の時間にも打ち合わせや作業をされていたのがとても印象的です。
芝さん:講義後のアンケートの満足度も高く、充実した学びの場だったように思います。
市原さん:高い評価を得られたことは本当に良かったです。私たちはこれまでに名古屋で何度も同様の講座を実施してきましたが、大阪では初めて。名古屋でのスキームがどこまで通用するのか不安もあり、ワクワクする気持ちもありました。基本的に楽しみながら学んでほしいと考えているのですが、大阪の方はお笑いのレベルも高いから通用するだろうかとか(笑)。皆さんに満足いただけるよう試行錯誤した経験は、私にとってもプラスになりました。
芝さん:今後は商店街の若い方たちにも参加いただいて、一緒に学ぶような形になればもっと面白くなりそうですよね?
藤田さん:そうですね。マチコも商店街オープンも、商店街の「ウチ」「ソト」のどちらにも開かれた場であることが特長の一つ。今年度は商店街やまちづくりに興味のある方に多くご参加いただきましたが、商店街に関わりのある方や地元の方、年齢や職業に関わらず幅広い方にご参加いただけたら嬉しいです。
井尻さん:商店街やまちづくりに興味はあるけど、どうしたらいいか分からないし、知り合いもいないし、ネットワークもないし…という方もいらっしゃると思うので、マチコがそのきっかけの場所になればいいなと思います。そして、ここから商店街のファンをどんどん増やしていきたいですね。
まちの特色や背景を見つめ、このまちの、この商店街の、この建物に何があったらいいのか――実際の商店街の空き店舗でお店のオープンまで挑む「商店街オープン」。
〉〉〉2023年12月から「商店街オープン」がスタート。約4か月間にわたりチームで現地調査やミーティングを重ねて事業プランを作成し、現在、新店舗の開業に向けて着々と準備が進む。
芝さん:「空き店舗を活用した商店街再生事業」を始めるにあたり、大阪市では独自に商店街の実態調査を行いました。空き店舗対策に積極的に取り組もうと考えている商店街も多く、その中から応募のあった都島区の大東商店街と西成区の玉出本通商店街を今年の舞台に選出しました。
藤田さん:大東商店街の方がお一人、マチコにも参加いただくなど、商店街の皆さんの意欲の高さに驚くとともに、今回のプロジェクトに期待を寄せてくださっていることを実感しました。
市原さん:そうですね。私もプロジェクトを通じて期待の大きさをひしひしと感じました。
藤田さん:また、商店街オープンの参加者の約半数がマチコ受講者で、名古屋ではなかった状況にいい意味で少しびっくりしました。マチコを受講してみて、商店街やまちづくりに興味が高まり、学んだことを実際のまちで実践してみたいと考えてくださった方が多かったのかなと嬉しく思います。
市原さん:それもあってか、皆さんとても積極的。もともとは大東商店街や玉出本通商店街に関わりのない方がほとんどだったのですが、アイデアもどんどん出てきて、議論も活発で。
藤田さん:地元が商店街だったり、近くに商店街があったりと、商店街に思い入れのある方も多くいらっしゃったのもプラスに作用したのかもしれません。先ほどお話ししたように、商店街オープンは商店街やまちづくりに興味があれば、商店街の「ウチ」の人も「ソト」人も誰もが参加OK。商店街の「ウチ」の人はその地域のことをよく知っていますが、逆に当たり前だと思っていることに「ソト」の人が気づきを与えてくれることもあります。たとえば、「なんでこの居酒屋さんの入口はこんなに低いのか」とか。
市原さん:今回でいえば、「飲食店の価格がすごく安い」とか。地元の人は普通なので、あまり感じていないかもしれません。
芝さん:皆で行った中華屋さんもとてもお手頃でしたね。
市原さん:お寿司屋さんもめちゃくちゃ安い!
藤田さん:量も多くてお得感があって、もちろんおいしくて。じゃないと、その地域では許されないんだと思います。「ソト」の視点がなければ、当たり前すぎてまちの魅力に気づかなかったかもしれません。まちの特色や背景を捉えながら、このまちの、この商店街の、この建物に何があったらいいのか。まちづくりに欠かせない多様な視点と思考力を身につけながら、空き店舗の再生に携われるのも商店街オープンならではの魅力の一つといえます。
「おおさか商店街オープン」を通じて好循環を生み出し、大阪市内の商店街を元気に。今後も商店街の活性化を全力でサポートし続けたい。
芝さん:今後、このプロジェクトを通じて魅力的なお店ができることで新しい風が吹き込まれ、若い人たちが商店街の役員など新しい担い手になったり。商店街自身の魅力も高まって、活動の幅も広がる。そんないい循環が生まれることを期待しています。
井尻さん:ただ、大阪市内には約400の商店街があるため、すべての商店街の空き店舗再生に携わることは難しいのが現状です。だからこそこのプロジェクトを契機に、「新しく魅力的なお店ができて元気な商店街だな」とか「自分もこの商店街でお店を開いてみたい」と波及効果を広げるのも、私たちの使命だと考えています。できる限り多くの空き店舗再生をサポートしていきたいですし、そのためにもまずは成果を出して、継続できるようにしたいですね。
藤田さん:私たちも井尻さんや芝さんと想いは一緒です。だからこそ、第1回目に手を挙げてくださった大東商店街と玉出本通商店街で、何が何でも素敵なお店を実現したいと強く思っています。もちろん商店街の活性化には時間がかかりますが、私が経験した限り、回りだすとそれぞれが自律して回っていくことも多い。大阪はまちにも人にもパワーがあるし、目に見えた成果につながっていくのも想像以上に早いかもしれません。
芝さん:また、マチコは人を育てる、商店街に興味をもってもらう、商店街の若い方に活動の手法を学んでもらうことに重きを置いていますが、商店街オープンもお店を開くだけでなく、自分たちがこの商店街を盛り上げていくんだという想いをもった人材を育て、増やしていく必要があると感じています。
市原さん:その通りですね。私たちプロがすべてやってしまえば一番スムーズだけれど、それでは意味がありません。だからこそ、商店街オープンの参加者たちが事業者として直接お店をやらなくても、自分の店だという意識を持てるようになることが大切。そうなれば継続的に商店街やそのお店を通じて関わっていけるし、愛着と愛情をもったまま、それぞれの次のフェーズに進んでもらえると思います。
井尻さん:商店街側のマインドを変えるきっかけにもなるんじゃないでしょうか。大東商店街と玉出本通商店街にお店がオープンすれば、大阪市でおおさか商店街オープンというプロジェクトを始めたんだと知っていただける機会も広がるはず。「おおさか商店街オープンって何だろう」「うちの商店街でもやってほしい」というだけでなく、「同じように自分たちで何かできないかな」とそんな声を聞けたらいいですね。
芝さん:長期的に考えると、個性的なお店ができて、エリアごとの特色が出てきても面白いと思います。ほかにも、商店街の中で「私はマチコ何期生だよ」という会話が生まれたり、修了証のワッペンの色が期ごとに違うのでそれを見せ合ったり。
藤田さん:あと私は、おおさか商店街オープンの参加者の方にはもちろん、関わるすべての人に「楽しい」と思っていただけるようにし続けたいです。楽しい場所には人が集まってくる。これまでもこれからもずっと、私はそう信じています。
芝さん:商店街は日常の買い物の場としてだけではなく、地域のコミュニケーションの場として、創業の場として、人々の生活に寄り添う大切な存在です。その役割もまだまだ広がっていくはずですし、だからこそ、商店街がもつポテンシャルを最大限に発揮すれば、もっと多くの人が楽しめる場所になるはずだと改めて感じています。
井尻さん:店主の高齢化が進んでいることもあり、商店街を活性化したいけど何したらいいか分からないし、若い人たちも来てくれないし、とお話しされる方も多くいらっしゃいます。でも、そんなことはありません。何かきっかけがあれば変わっていくし、まだまだ活性化できますよと伝え続けたい。「おおさか商店街オープン」を通して私たちのそうした想いを発信するとともに、市内の商店街全体が盛り上がるよう、これからも全力でサポートしていきます。
profile
●株式会社ナゴノダナバンク
名古屋市西区那古野周辺のまちづくりに取り組む「那古野下町衆」の部会として結成。現在は、独立した組織として、円頓寺商店街のある那古野地区を拠点に空き家対策、古民家リノベーションなど不動産活用や各種イベントの企画運営を行うほか、広域的な地域間連携による、魅力あるまちづくりに取り組む。
●市原正人/一級建築士(ナゴノダナバンク代表取締役)
株式会社ナゴノダナバンク代表取締役、有限会社デロ代表取締役(市原建築設計事務所)、一般社団法人ボンド代表
30年以上円頓寺商店街を中心にまちづくりに関わり、2009年ナゴノダナバンクを発足。2018年には、その取り組みが注目され「名古屋円頓寺商店街の奇跡」山口あゆみ著が講談社より出版された。また、文化財の管理及び民間活用、地場産業・食の振興にも取り組む。
●藤田まや/宅地建物取引士
株式会社ナゴノダナバンク代表取締役、円頓寺商店街「化粧品のフジタ」
大正2年創業の化粧品屋に生まれ、実家と地元が無くなってほしくないという思いからまちづくりに関わる。現在も実家と地元の取り組みを大切にしながら、他地域のまちの取り組みにも携わる。愛知県商店街活性化委員、愛知県商業地域貢献活動懇話会委員も務める。